1/27 中田浩二の契約満了

 昨年暮れから、チャリティ、トライアウト取材、サイト・リニューアル、会報誌のリニューアル、イベントの設定、新年度版冊子編集、C級取材、リフレッシュ取材、出張&出張、忘年会・新年会・ただの飲み会・晩酌・夕暮れの素敵なビール…なーんて、厳っしいスケジュールをこなしている僕に(それを言い訳にサイトの更新をしていないダメな僕)、何通かメールが届いた。怖い内容のものもある。―中田浩二の移籍のことだ。
 報道を見る限り、中田浩二はマルセイユに移籍することになるのだろう。

 実際のところ、起こるべくして起こった話である。というか、今までこうした話が起こらなかったのが不思議なくらいでもある。
 まとまらないだろうし、結論も出ないけれど、ちょっと書き留めておきます。

---*------*------*------*------*---

 好みから言えば、こんな移籍のやり方は好きではない。
 それどころか、まったくもってけしからん、としか言いようがない。これでは中田浩二の第一義は「海外に移籍すること」ということのように感じてしまう。選手としてステップアップをしたいという意味も希薄に感じるし、正当な評価を受けて行きたいという意思もあまり感じられないし、チームやチームに関わる人たちへの敬意もあまり感じられない。なんでもいいから、とにかく海外でプレーしたい。行ければいいんです。それにはこんな方法しかとれない選手なんです。だから、こんなやり方で行くんです――そんな意思表明のようにさえ感じてしまう。
 単に美学の差異かも知れないけれど。

---*------*------*------*------*---

 契約というものは、好むと好まざるとに関わらず、制度と供にあるものである。
 なにはともあれ、今回の件は制度には外れていないのだから、好き嫌いを除けばどうしようもない話である。だいいち、Jもチームも、今までに何度も警鐘は鳴らされてきているはず(広山の件を筆頭に)なのに――後で触れるけど、あえてかも知れないけれど――対応が全くなされていない。

 移籍金に対する背景はざっとこんなものだ。
 ボスマン裁決の延長線上で、移籍金という概念が奴隷を扱う人身売買と等しいのではないかと、EUとFIFPRO(国際プロサッカー選手協会連盟)が移籍金に関する制度の撤廃をFIFAに迫り(「移籍金という言葉すらおかしい」とのこと)、UEFAも交えて制度の変更を検討しはじめたのが1999年。(辣腕で知られるFA選手協会のゴードン・テイラー氏が活躍したそうだ)2001年にはそれが成立される。
 世界的なルールはこのように変わっていく。ただ、ローカル・ルールはローカルで運用出来た。そこがひとつのキモでもある。
(おかしい部分があったら、教えてください。当時の取材メモなどは失くしてしまったので、記憶のみで書いています)

 この2年に満たない期間にも、日本の機関にはきちんとアナウンスはされていた。成立された直後に広山の事件が起こった。

---*------*------*------*------*---

 ただ、この件が全てクラブチームの怠慢だとは言えない部分もある。もちろん、どんなチームでも複数年契約というものは頭にあるはず、だからだ。

 ご存知の通り、Jリーグの各クラブは経営再構築の途上である。複数年契約を行うことによる経営リスクは高い。それを考えると、契約満了して海外に移籍するというような今回のようなケースは稀なので、単にリスク比較だけすればこの結果は逃れようもない事実となる。入るか入らないかわからない移籍金のプロテクトより、必ず出て行くコストのプロテクトが優先だったということだろう。

 横浜フリューゲルスの合併以来、Jリーグもクラブチームも経営健全化を必死になって努めてきた。鹿島だって多大な累積赤字があったはずだ。だいいち、10ヶ月近く報酬を支払い続けて昨年の半ばにようやく復帰してきた中田浩二が、まさか海外に出ようなんて思ってもいなかったことだろう。甘いといえば甘いのだけれど、リスクヘッジの優先順位はどうしても後手にしてしまうよな、と思わざるを得ない。

---*------*------*------*------*---

 この結果を経て、今後複数年契約が増えるか…を考えると、主力クラスに多少増えるくらいで、現実的には難しいのかな、と思う。複数年契約の違約金を支払ってまで、ヨーロッパのチームが獲得したいと思うような選手がどれくらいいるのか…ということだ。(個人的に、負傷上がりの中田浩二にその価値があるとは考えにくい…)
 ただ、弱い立場である選手の立場が少しでも改善されるのは、いいことだよな…って思う。

---*------*------*------*------*---

 ちなみに、佑二、山瀬、中田浩二(稲本もかな?)と、豪腕を振るった代理人が注目を浴びている。好き嫌いで言えば、そのやり方は好きではないけれど、代理人の仕事をひらたく言うと「選手の欲や願望を具体化する」ことなので、その意味ではかなりピュアに結晶化している。機能度は恐ろしく高い。

 でも、あえて誰もやらなかった(専属交渉期間云々なものも含め)手法を用いたのは、日本サッカー界に風穴を空けたのかも知れないけれど、選手の将来に暗雲を投げかけたのかも知れない。10年後にどうなるのか、非常に興味があるところだ。

 あっ、やっぱり、まとまらなかった…。