1/15 コロシアムにて

 味の素スタジアムには、スタジアムと外壁の間に通路がある。コンクリートの壁に囲まれた無機質な通路。普段は駐車場として使われているこの通路を選手が歩くことはほとんどない。もし、あるとすれば、スタジアムの横に寄り添っている小さなサッカーグラウンド、アミノバイタル・フィールドに向かうためだろう。

 シーズンも終了した寒い冬のある日、寂しい通路を歩く選手たちがいた。肩をすぼめて通路を通り抜け、報道陣とスカウトだけが待つ普段とはまったく違うフィールドへと足早に向かう。

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――失敗はできない。
 この場だけで判断されるわけではない。一度失敗したとしてもそれが自分の評価に繋がるわけではない。だから失敗してもかまわないんだと理性では十分にわかっていても、自分の奥底にあるものがそれを否定する。失敗はできない。いつもとは違う緊張が圧倒的に自分を支配している。いつのまにか手に汗を握り、こんなに寒いのにもかかわらずどうにも喉が渇いてたまらない―。

 白いラインをまたぐと、きっと気持ちが楽になることだろう。走って、蹴って、自分ができることのすべてをこのピッチに置いてくればいい。胸がきりきりとするけれど、走ればきっと楽になる。
 今日が終われば肩の荷もおりる。最近あまり眠れなかったんだ。ふと目をあげると、がっかりするほど空が青い。
 今夜はぐっすり眠れるだろうな。だから…