7/27 コラム(転載)

 サッカー選手の取材を日常的にしているというとみんな羨ましがるのだけれど、インタビューをしていると、これはこれでけっこうストレスがたまる。

 インタビュアーというのは、インタビュイーの身体の奥底から湧き上がるなにかを、ミスターマリックのような怪しげなパワーで導き出すことがひとつの仕事である。そして、その湧き出てきた亡霊たちが、そのまますんなりと読み物になってくれるということは、ほとんどない。(だから仕事になるのだけれど)

 その導き出してきた所在なさそうな亡霊たちを呼び集め、話を聞いてあげてから成仏させ、その想いだけをのこぎりと金槌でトンテンカンテンと人が読むべきものに纏め上げるのがもうひとつの仕事である。
 口述筆記のスキルがある霊媒師…って感じだろうか。

 亡霊を乗り移らせ、成仏させる間に、表現しづらい老廃物が澱のように身体の中に溜まる。(表現できないのではない。しづらい)その澱がすごく辛い。映画「グリーンマイル」でジョン・コーフィが吸い出した、あの恐ろしげな何かのようなものだ。

 僕はその老廃物を身体の中で溶かす。ビールを飲みながら、時間をかけてじっくりじっくりと溶かす。
 一時期、これがきつくて、少しヘンになりかけたけれど、わりと僕は鈍いタイプだったらしく、300人以上の澱を身体の中に通過させながらもなんとか生きながらえている。
 人の想いの力というのは、なかなかすごいものである。

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 カズがJ2に移籍したことにより、オールスターへの出場権がなくなってしまった。
 すでに50,000票もの投票を集めているカズの出場に際し、超法規的な措置を求める声もあるようだが、J2のリーグ戦日程と天皇杯の日程の問題があるため、なかなか難しいだろう。まあ、所属チームの日程をこなすことがカズの選手としての第一義だから、それはそれでしょうがないことでもある。

 でも、行き場のなくなった50,000もの想いはどこに行くのだろうか。
 なにかいい手段があるといいのに...。