6/8 コラム(転載)

  息子が生まれ、妻が専業主婦になった。
  おかげで、それまで僕が作ることが多かった夕食作りが妻の役割に完全移管した。妻はもともと料理上手なので、僕はほくほくしながら満足のいく食生活を営んでいる。

 僕が主体となって夕食を作りはじめたのは、フリーになったばかりの頃だった。まったく仕事のない日が続いた。もちろん働く気はあった。でも「僕、個人で仕事を請けますよ。さあ、みなさんよろしくね」と言ったところで、なかなか仕事は舞い降りてこないのが現実だ。働かざる者食うべからず。僕にできることは家事しかなかった。

 仕事がある程度入るようになりそれがピークになっても、SOHOという形で家で仕事をしている立場として日々の夕食を作り続けた。もちろん、不満はまったくと言っていいほどなかった。僕は主婦的に食事を作ることがとても好きだったからだ。

 朝5:00からパソコンに向かい夕方6:00に仕事を終えるやいなや、買い物用財布とエコバック(買い物袋を辞退すると5円相当のスタンプがもらえる)を抱えて自転車に飛び乗りスーパーに急ぐ。夕飯の買い物だ。
  献立はスーパーについて、食材を見ながら決める。例えば、妻はイカ納豆が好きである。そのため、安くて(←これが肝心)新鮮なスルメイカがあった場合、イカ中心のメニューに決まる。身は皮を剥ぎ、細切りにしてイカ納豆に。ミミの部分はコリコリと歯ざわりがいいので細切りにしてローズソルトで。ゲソは少し切って腸焼きにするか即席塩辛に。あとは枝豆、若布と胡瓜の酢の物、冷やしたトマト、隠元か小松菜の胡麻和え、そんな和風な肴にビールをごくごく飲む。んーうまい。そうそう、忘れてならないのが糠漬け。自家製で漬けた糠漬けはこれ以上ないご馳走なのだ。

 この糠漬け、よく難しいという言葉を耳にする。
  しかし、家庭で食べるだけなのであれば、決して難しくはない。ただよく失敗をする。それはテクニック的な問題ではない。問題は別のところにある。
  手間。とにかく手間がかかるのだ。
  僕のようなずぼらな人間は「1日くらい休んだって…」ってすぐ思ってしまう。でもそれが糠漬けにとって命取り。休みをきっかけに味が落ちる。酸っぱくなる。さらには捨て漬けもしないと味が薄くなる。仕舞いにはダメになってしまう...。
  そうなるとまた最初からやり直し。旨い時期はしばらく続くけれど、少し手を休めると元通り。
  毎日のケアが実に大切なのだ。

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 さて、日本はバーレーンを1-0で降した。
  強運の持ち主である、アルトゥール・アントゥネス・コインブラ監督は珍しいことにその幸運のダイスは振らずにこの試合を勝ち抜いた。まったくもって実力勝ちである。試合を観ていた人の多くは、この試合を落とすんじゃないか、という心配を持つことすらなかったことだろう。逆に言うと、それだけ地力に差があったということである。
  また、多くの人が思ったに違いない。
  予選は通ったな、と。
  そして、こうも思ったはずだ。
  このままだと本大会のグループリーグは難しそうだな、と。

 ヒデや俊輔が抜けるとまた別にチームに戻る。そしてしばらくしてまた最初からチームを組み直す。試行錯誤しながらも良いチームになる。そして解散し、またシャッフル。
  積み上げがほとんどない…。糠漬けだって美味しくなるのは積み上げなのに。

 日本の選手の実力は高い。
  もっともっと高いレベルを要求してかまわないはずだ。
  本大会で結果を求めるのであれば、今のうちに漬物をつける人物についても考慮をしはじめていいのではないか。ジーコ監督が糠床をキープできないのはわかっているのだから。