6/1 コラム(転載)
1年において最大の難関である花粉の季節がようやく過ぎ去った。
空は青く、太陽は燦々と大地を照らし、そよぐ風が新緑の薫りを連れて僕のところにやってくる。
初夏だ。
だというのに。鼻水地獄から命からがら這い上がったというのに。
人生はまったくもって不条理である。
こんな素晴らしい季節だというのに、我が家の周辺にはオープンテラスでビールを飲めるお店が圧倒的に少ないのだ。こんな損なことなんてそうそうない。
胸に手をあて、目を閉じ、耳を澄まして想像してもらいたい。
並木道にある小さなバー(レストランでもいい)のオープンテラス。季節は初夏、時刻は薄暮の夕暮れ。テーブルにつき、冷たいビールをオーダーする。日中に溜まった熱気を向こう側に連れていこうとする涼風が耳元を揺らす。帰宅や夕食の買い物に急ぐ人たちが家庭が持つ暖かで優しげなざわめきを残像のようにあちらこちらに置いていく。そんな柔らかな瞬間に包まれながら、冷たいビールをグラスに注ぎ、ゆっくりと時間をかけてごくりごくりと飲む。BGMはキース・ジャレットの「My Songs」。
―――ふう...。
ねっ、幸せでしょう?
想像するだけでもこんなにこんなに幸せだというのに、そんな幸福感が味わえるオープンテラスが近所に少なすぎるのだ。もしかすると、局地的なGDP向上を狙う多摩地区商店街連合の「全日本オープンテラスでビールを飲みたい連盟(会長:豊田)」に対する陰謀なのではないか。そんな疑念がふと頭をよぎる。
…いや、きっとそうだ。だって、本気で1軒くらいあってもいいはずだもの。ねえ?
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さて、ジーコジャパンはワールドカップ出場に向けた2連戦前の大切な、本当に大切なテストマッチを連敗で終了した。
トップ選手だけではないペルー。一次予選で敗退したUAE。
負けるような相手ではないし、負けてかまわない相手でもない。さらにはホームで満員の観衆。なのに、なぜか負けてしまった。
相手のレベルにあわせてしまうのは、リアクションチームの宿命とも思える。(それにしてはカウンターのキレが悪いが)
ディフェンスラインと中盤の連動の悪さ、マークの受け渡しやカバーの不徹底(2点とも!)、サイド攻撃の精度の低さ、セットプレーの粗さ。ロジカルな観点で課題をあげれば枚挙に暇がない。
その課題を解消するチーム戦術の向上を期待できないことは、周知の通り、監督のスキルを考えれば動かしようのない事実である。That's All.そこには局所的な陰謀すら存在しない。
課題は簡単には修正されない。
そろそろ行くところまで行き着いた…。そんなキモチがあることは否めない。
でも僕は願う。
監督の思惑を超越したある種の自我を含有するこのチームが、自然発生的に自己を形成して新しい進化のスタイルを僕たちに提示してくれることを。
そして、予選を勝ち抜くとともに、監督のあるべき姿を僕たちに示唆してくれることを。
8年前、国立競技場からの帰り道に味わった苦い鉄の味を思い出しながら僕はさらに願う。
「がんばれ、日本」
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